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特別な”夏休みの思い出”が欲しかった。【映画:ほとりの朔子】

 誰だって映画「スタンド・バイ・ミー」みたいな特別な夏の思い出がほしい。だけど持っていない日本人の方が大多数なのではないか。

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お盆はおばあちゃん家に帰省して、時間がぼうっと過ぎていく、なんでもない夏を過ごす。まさにわたしがそうでした。たいてい夏の思い出になるような出来事は、8月の中旬やお休みのど真ん中に起きてはくれない。夏の準備が始まる6月の蒸し暑い日とか、9月のビールがおいしい夜とかじゃないだろうか。なんでだろうね?

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映画「ほとりの朔子」を観た。深田晃司監督の「淵に立つ」が衝撃で、狂気の沙汰みたいな女優・二階堂ふみが主演とあれば観ないわけない。赤いワンピース似合うね~。映画「蜜のあわれ」を思い出した。

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この映画と同じく、ちょっとむちっとしていて、でも華奢なところもあって、いわゆる日本人の女の子体系な二階堂ふみのあやめかしさにドキリとした。モデルさんよりも、近所のあの子にドキッとする、どこかいけない感じに似ている。

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夏休みに、羽を伸ばしにきた浪人生の朔子(二階堂ふみ)。浪人生だけど、夢ややる気に満ち溢れているわけでもない。ちょっと退廃的だけど、どこにでもいるような普通の子だ。

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美人な叔母(鶴田真由)に、叔母の幼馴染のおじさん(古舘寛治)。そのおじさんの元に身を寄せる甥(太賢)。朔子の2週間が始まるわけなのだが、まぁ不穏不穏。みんな言わないけど、何かしら影を抱えている。叔母さんの家、ほとり、海、喫茶店、おじさんが働くホテル、駅……とRPGゲームさながら、朔子は町中にどんどん足を運んでいく。

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役者陣の生ぬるいしゃべり方、「え?」「ん、あぁ……」とか日本人独特な会話の隙間、たわいもない内容がリアル過ぎて狂気。だけど、海でキラッキラとはしゃだり、将来の夢を見つけたり、夏祭りに心躍らせるテラスハウスのような恋物語を見るために、この映画があるんじゃない。しっかりと自分の足で歩くために、どこにいても自分の存在がきちんとわかるようになるために。この映画で、登場人物と一緒に不思議な時間を過ごす必要があるのだ。

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みんな毎年同じような夏休みを繰り返していると思うから、こんな不穏な冒険もたまには良いのかもしれない。今、真冬だけど。