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アクション映画よりも激情的な体験を【映画:スリー・ビルボード】

アカデミー賞も発表されるし、観なくちゃいけない映画が多すぎる。みなさんそう思っているのではないでしょうか。「グレイテスト・ショーマン」も気になるし、「キングスマン」の続編もまだ観ていないし、「スター・ウォーズ」の新作も公開が終わっちゃう!あぁ……そうこうしている間に、「シェイプ・オブ・ウォーター」が公開されるし、え?ソフィア・コッポラの新作は意外と上映されていない??と、てんやわんやしているのは、わたしだけではないはずです。

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そして早いうちにぜひ観て欲しいのが「スリー・ビルボード」だ。去年秋に開催された東京国際映画祭で、プレスフリーパスが当たったのだけど本作と「シェイプ・オブ・ウォーター」は一番の注目作で、即満席。ちょっと残念~なんて思っていたのだけど、これを観たらちょっとどころじゃなかった。出会えるものなら、去年の秋に、もう出会っていたかった。

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詳しく語ろうとするとネタバレになってしまうので割愛。タイトルの「3つの道路わきの立て看板」が中身そのものだ。田舎町で暮らすミルドレッド(主人公)は娘さんを殺されて、警察に「犯人逮捕はまだ?」という衝撃的な立て看板を出す。それも3つ。当然小さな田舎町なので警察も町の人も、ザワつく。警察は「どうしてこんな看板を出すんだ!?」と怒り出す。

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……と、ざっとのあらすじだけ聞くと「犯人は結局誰なの?」「ミルドレッドはどうなっちゃうの?残された家族の人生は?」と、大枠が気になると思うのだけど、この映画はそうじゃない。誰もが悪者になりうる可能性があり、悪者が善人になる可能性はどこに潜んでいるか分からない。どんどん想像の範疇を超えてくる展開が待ち受けている。アクション映画のように手に汗握る体験ができるのだ。

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映画や読書は、本来体験できないようなことが体験できることが醍醐味ですよね。アクションやホラーなんてまさにそう。SFやギャング映画も、非日常だ。映画「スリー・ビルボード」もあっと驚くような体験を浴びせてくれる。感動するヒューマン映画とはまた違い、共感できるシーンがあるわけでもない。だけど、映画という非日常を体験できるツールを使って、ハッピーな内容じゃなくても、多くの人にぜひ体験してほしい作品だと思いました。

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ちょっとだけネタバレが許されるなら。これだけ予測不可能で明るい光が見えないストーリーだけど、本作はラストが良い。光が窓から差し込むような、爽やかさがちゃんとあるのだ。

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実は「エモい」というのは軽い気がしてタイトルに「激情的」と入れたが、本当はエモいって言っちゃいたかった。キャストも音楽もどのシーンもエモい。不完全燃焼になることがない、不思議な気持ちで映画館を後にできる作品って、そう多くはないので、ぜひ劇場で観てみてください。