時々は子どもの目で、世界を見てみたい【映画:ぼくの名前はズッキーニ】
今日は可愛らしさもありながら、胸がウッとなる映画を紹介します。
そう、「ぼくの名前はズッキーニ」です。ティム・バートン作品に出てくるような、目力の強さが怖いって?大丈夫、最後にはちゃんと愛おしく見えてきます。
アルコール中毒のお母さんの元で暮らすズッキーニ少年。とある出来事がきっかけで、孤児院で暮らすようになり、そこでの成長や仲間との日々が1時間ちょっとの尺で綴られている。最初から釘づけになるのがストップモーションアニメなのに、彩豊かな色彩だ。光と影が使い分けられていて、雨のシーンでは、自分がそこにいるかのような気分になる。
あとびっくりしたのがカメラワーク!例えば、階段を下からあがっていくシーンだとか、実写映画のようなテイストになっていて新鮮だった。「わぁ~粘土の人形たち可愛い~!ストップモーションアニメって可愛い~!」では終わらない。
孤児院の子どもたちはみんな、それぞれ家族に事情があるけれども、孤児院では明るく楽しく暮らしている。葛藤や悩みがあっても、毎日を子どもらしく無邪気に生きるシーンばかりで、胸がなんだかキュッとなる。それでも未来に満ち溢れている。
子ども目線らしくて、可愛らしいなぁと思った1番好きなシーンがある。ズッキーニが意中の女の子カミーユにドキドキするとき、映画館の両端から「ドキドキドキ…」と、だんだん心音が大きくなる音が聞こえてくるのだ。すっごく可愛くて、ちょっと聞き逃しそうな音なのが、余計可愛い。うちのテレビだと、たぶん聞こえない。
物語は子ども目線で進むのだけど、レイモン(子どもたちを見守っている警察官)が、自分の子どもについて聞かれたとき「世の中には親を捨てる子どももいるんだよ。」と、寂しげに返すシーンがある。浜松でタクシーに乗ったら「子どもは東京にいるんだけど、全然帰って来ないんだ~」と、ちょっと怒ったように、でも悲しげにもらしたおじさんがいた。タクシーの運転手のおじさんを思い出して、ちょっと泣けた。親も子どもも「捨てられる」を「卒業」とか、もっと喜ばしい言葉にできたらいいのにな。でも、なかなかできないよね。
立場や環境は選べない。生まれや育ちも選べない。だけどズッキーニや孤児院の子どもたちみたいに、選べない世界でこそ、たくさんの色を見つけて、「選べる世界」に変えていけたらと思う。可愛らしさとは裏腹に、勇気をもらえた映画でした。