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人生スローペースだっていいじゃない【映画:ラッキー】

ちょっと前に試写会で映画「ラッキー」を観てきた。ミニシアター系、アップリンクの配給、王様のブランチの映画コーナーのミニシアター特集でLiLiCoさんが紹介するかどうかも怪しいレベルだ。

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内容はというと、後から思い出してもじわじわ効いてくるような良い映画だった。スローペースで、オノナツメさんの漫画のようなアンニュイさが漂う。観る人によって響く部分はそれぞれ。映画「パリ・テキサス」で脚光を浴びたハリー・ディーン・ダンストンの遺作でもある。この映画の試写会の日、アカデミー賞映画のパブリックビューイングへ行き、メモリアル紹介(その年に亡くなった方への追悼)を見たばかりで、余計に鼻にツーンと来るものがあった。ちなみにデヴィッド・リンチがかなり良い役でしれっと出ている。

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ストーリーはラッキーと呼ばれる90歳のおじいちゃんの田舎町の日常がつづられている。規則正しく置き、近所のカフェで朝ごはんを食べ、散歩し、クイズ番組を見て……っていう、うちのおばあちゃんと同じ感じ。ごめん、おばあちゃんもう他界しているんだけどさ。でもどこもご老人は規則正しく日課もあまり変わりないのでは。ラッキーの特徴というとちょっと口が悪い。そして代わり映えしない日常に見えるがちょっとずつ変化しているのだ。あんまり言うとネタバレになるのだけど。老人の1日は、確かに変化しているのだ。ラッキーは悪態もつくけど、子供みたいに素直な面がある。そこが可愛くて仕方ない。

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みんなのお家とか、隣近所に頑固だけど可愛いじじいっていない?ラッキーがまさにそう。そして劇中のラッキーと同じく、ハリー・ディーン・ダンストンも第二次世界大戦に出征経験がある。この映画は登場人物がさりげなーく良いセリフをぽんっと吐いて残していく。あぁ、って思う場面が数度あるはず。映画ファンのおじいちゃん世代に好まれそうだけど、若い人にこそ見て欲しい。生きるって夢や希望を持って、意識高くバリバリ働くことだけが全てじゃないだろう。昨日を振り返ったり、明日を予想したり、お酒を飲んでいる瞬間を楽しんだり……そういうところに少しでも多く感動できる方が、きっと楽しい。

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ラッキーは大爆笑とか大きく笑うことはないのだけど、だからこそ口元に笑みを浮かべたとき、思わず観ている方もにっこり笑顔になる。笑顔を押し付ける人よりも、愛想がない素直な人が見せるふとした笑顔につられるのと同じ。ハリー・ディーン・ダンストンはどんな気持ちでこの映画をクランプアップしたのだろうか。きっと大きな花束を受け取って、彼なりの笑顔を浮かべたに違いない。