深夜のおたのしみ。

いっぱい更新できますように。

何一つ忘れない【映画:君の名前で僕を呼んで】

鑑賞後、街の雑踏の中でも、目を閉じると美しいイタリアの田舎とサラサラと流れていく音楽が浮かぶ。余韻に浸りまくれる映画ができた。「君の名前で僕を呼んで」である。

f:id:yurinabcd:20180519234143j:image

ゲームの「ぼくのなつやすみ」ってダラっと続くように見えて、意外と1日1日がスッと終わっていくしイベントもあるし、テンポ良いじゃないですか。本作もそういう世界。

ドンドン日めくりカレンダーみたいに、日にちが進んでいく。8月31日だけじゃなく、9月のような続きがあるところも良かった。夏休みって、どうしてこんなに美しいんだろう。

f:id:yurinabcd:20180519234238j:image

最初は休暇先にやってきたオリヴァーを受け入れられないエリオ。男女関係なしに気になる嫌いなアイツができて、どうしようもなく好きになってしまって……っていう、少女漫画顔負けのベタさ。だけど途中からはエリオと一緒に一喜一憂して見てしまった。同性愛者じゃなくても、辛い片思いがしたことない人だって、誰だってエリオに共感してしまう。それがこの映画の不思議だ。

f:id:yurinabcd:20180519234437j:image

オリヴァーに夜中に会おうって言われて、終始時計を気にしてしまうシーンがあるのだけど、待ち遠しくて仕方ない気持ち、分かります。痛いくらい分かるのだけど、痛いくらい忘れてしまっていて、思い出した。
映画のこうやって昔の感情を思い出させてくれるところが好きだ。

f:id:yurinabcd:20180519235325j:image

関係性ができてからはオリヴァーにフォーカスされていたり、エリオの彼女が良い子だったり、ラストにじんわり来たり……見応えが満載で、グッとくるシーンの連続。どの登場人物にもなんとなく感情移入できる。ネタバレになるから控えたいのと、みんな口を揃えて言うのが、お父さんが名言を残していきます。これね、きっと引っ込み思案でシャイな日本人に好まれる隠れ映画だと思うんだ。ぜひ観てみて。f:id:yurinabcd:20180520000322j:image

「何一つ忘れない」と言うエリオ。君は恵まれてると肯定し、素直で弱さもあるエリオは不完全だからこそ良くてズルいなぁと思った。

わたしたちは「何一つ忘れない」って思う恋があったとしても、それを直接本人に言える人がどのくらいいるんだろうか。

恋だけじゃなくても、感動をストレートに、こんな完璧で言える人はどのくらいいるのだろうか。きっと数%しかいない。

重いって思われそうとか、変なプライドは捨てて、言葉をきちんと使うって大事だなぁとしみじみ。

f:id:yurinabcd:20180520000616j:image

辛い思い出とか失恋とか、無理に忘れる必要がない。大枠のラストは予告編やお察しの通り「一夏の恋」なんだけど、こんなに辛いなら恋しなければ良かった!とは思わない2人。「何一つ忘れない」って言われたらたまらないよね。悲しみも自分を作る要素として抱きしめていけたら。素敵な作品でした。