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目で見える形では分からない、本当の自分とは?【映画:シェイプ・オブ・ウォーター】

スリー・ビルボードシェイプ・オブ・ウォーター、どっちが面白かった?」と聞かれることがあるのですが、「上司ほんとムカつく!ころす〜〜!」と怒りの湧いた火曜日は前者、上司ころす気力も湧かないくらい落ち込んで、はぁ……ってため息出ちゃう水曜日は後者がおすすめです。

シェイプ・オブ・ウォーター」、アカデミー賞おめでとうございます。監督賞を獲ると作品賞を獲らないジンクスが続いていたからこそ、連覇できてなんだか嬉しかったです。

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今年のアカデミー賞は例年と違って、既に公開されている&受賞後に観られるのがポイント。毎年まだかまだかと待ち構えたのと違い、本作と「スリー・ビルボード」は今映画館で観られるし、「ダンケルク」は面白そうだから観た!なんて人も多いはず。

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ちなみに東京国際映画祭で「シェイプ・オブ・ウォーター」「スリー・ビルボード」はそっこーでチケット完売で、前者は"大衆ウケしない暗そうな映画じゃない?"、後者は"この監督知らないしなぁ…"って見くびってました。やはり評価される作品には理由があるんだなぁ〜!ここからは見どころを。

公開初日、満員御礼

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3月1日、映画の日でサービスデーとはいえ、平日なのに満員。しかもお昼の回。初めて土日以外の公開初日に行ったのだけど、若い人も年配の人もいて、わたしはそれがなんだか嬉しかった。映画は高いっちゃ高いし、NetflixAmazonプライムでいっぱい作品観られるけれど、こうやって自分みたいに新作を楽しみにしている映画ファンが多くて嬉しかった!

水の奥底にいるみたいに暗い画面

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予告編からも分かる通り、暗い暗い。使われてる色、灰色とブルーだけなんじゃないの?と思うくらいの暗さ。主人公のイライザが恋をし出したら、ちょっとずつハッピーになって象徴するかのように赤のアイテムが取り入れられるんだけど……それにしても、後半まで2色かよ!って思っちゃうよね。

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ティム・バートン映画をよく"ダーク・ファンタジー"って呼ぶけど、花とか咲いてるし、衣装も可愛いし、本作と比べたら雲泥の差。イライザと半魚人は言葉が喋れない。イライザを優しく見守る同僚と優しい隣人は、幸運の持ち主とは言えない。職場は格差があり、上は常に下に厳しい。 だからこそ暗闇に浮かぶ光や言葉、テーマソング(作曲賞受賞)が際立って美しく感じるのだ。

ハッピーエンドかバッドエンドか?

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物語の最初は、「リトル・マーメイド」のアリエルのお部屋みたいに、水に包まれたお部屋が登場し、隣人の印象的な言葉から始まる。

『もし私がそれについて話したとしたら。そうしたとしたらね。あなたに何を語ったであろうか?考えてしまう。時代について語ったであろうか?ずっと昔に起こった事…そんな気もする。麗しのお姫様が存命だった最後の日…あるいは、場所について語っただろうか?小さな海岸のそばの町だが、そのほかは全てが遠くにある…あるいは、どうだろう。彼女の事をあなたに語っただろうか?声を持たないお姫様のことを。あるいは、多分、私はただあなたに、これら事実の、愛と喪失の物語の、その真実について警告だけしたであろうか?そして、すべてそれを破壊しようとした怪物のことを。』と始まる。もうこの部分だけで美しすぎて脚本賞をあげたいゲット・アウト

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ギレルモ・デル・トロ監督は幼い頃に見た、最後に半魚人が殺されてしまう映画が不憫で、実は生きててヒロインとハッピーエンドでした!という妄想を漫画にしていたと言う。えぇ、じゃあバッドエンドなはずなくない?でもこの冒頭だと……と終始ラストが気になりながら観た。正解はぜひ本編で確かめてみてほしい。

「本当の自分とは何か?」

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言葉にするとシンプル。だけどこの映画のポイント。イライザが途中で「本当の自分って何?」と感情剥き出しで訴えるシーンが出てくる。人から見えている自分は、外見含め一部であって、本当の自分は自分しか知らない。メキシコ人のギレルモ・デル・トロ監督だからこそ、より多くの人に響くメッセージだ。この映画、未来のわたしたちはどんな目線で見ているのだろうか。国境や差別を超えられている世の中であってほしい。